もくじ
国家試験による免許制度(操縦者の技能に関する証明制度)について
2021年6月4日の参院本会議にて航空法改正案が可決成立しました。
これにより、機体の安全性に関する認証制度(機体認証)と 操縦者の技能に関する証明制度(免許制度)が創設されることになります。
上記リンクから令和3年3月9日に提出された航空法等の一部を改正する法律案がPDFにて参照することが出来ます。
特に今回注目が高いのは、操縦ライセンス(ドローン操縦の国家資格)かと思います。
現在、民間のドローンスクールによる民間資格に頼っていたドローンの世界でしたが、2022年度内を目途に国による試験が行われ国家資格としての操縦ライセンス(免許)を取得できるようになります。
制度の詳細は今後省令などが決められ徐々に分かってくると思いますが、とりあえずは国交省の検討小委員会で中間とりまとめが出ておりますので、この資料を中心に免許制度についての現状を確認してみました。
今回参考にした資料は、以下の3つが中心です。正確な情報は以下のリンクからご確認下さい。
今回の記事は、個人的に理解を深めるために書いたものなので、分かりにくかったらごめんなさい。
士業でも専門家でもない私が書いたものを公開して良いのかどうか・・・。
個人が書いたメモ程度の内容だと理解してお読みいただければ幸いです。
国家資格(操縦ライセンス)が無ければドローンを飛ばせなくなる?
今回の法改正で良く勘違いされる一つとして、免許制度が始まったら免許が無ければドローンを飛ばせなくなるのでは?というもの。
実際には今まで許可承認されていた飛行であれば免許がなくても2022年度以降も飛ばすことは可能になる方向です。
免許が絶対に必要になるのは第三者の上空を飛ばす場合になるとされています。この場合は一等ライセンスの免許にプラスして機体の安全性が確認された機体認証を受けている機体を使用することや適切な運航管理体制が設けられていることなどが必要になるとのこと。
今まで国交省から許可承認を受けて飛ばしていた方々を含め、これからドローンを飛ばそうと思っている人も、国交省から許可承認を得ることでライセンスが無くてもドローンを飛ばすことが出来そうです。
ただ免許を取得することで、今まで行っていた許可承認が不要になったり一部を不要にすることなどのメリットが出てきそうなので、免許の取得も考えていきたいもの。
現在の包括申請(最長1年間で範囲は最大で全国)がそのまま残り続けるのか、将来的に包括申請は無くなっていくのか、その辺りも気になりますね。
将来的には個別的に申請する現在の方式は無くなると思います。もちろん段階的にではありますが、完全にライセンスへ移行するのが数年後なのか10年程度かけるのか分かりませんが、周知されていくにつれ段階的に移行していく方向かと思います。
また、今まで法令化されていなかった運航管理のルールなどが明確化されるようです。つまりFISS等の登録や飛行日誌の記録、事故発生時の報告、補助者の配置などがそれにあたります。安全に関わることですから、しっかりと理解しておく必要がありますね。
民間のドローンスクールで取得した資格を持っていれば国家資格は優遇される?
JUIDAやDPAなどのドローンスクールを卒業し、ライセンス(民間資格)を取得している人はどうなるの?という疑問もあるかと思います。
令和4年4月20日に行われた小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議(第17回)の資料によれば以下のような文言があります
「既存の許可承認制度の合理化・簡略化を図るため、本年7月までに民間技能認証保有者等の経験者向けの講習要件を策定すること等を通じ、二等操縦ライセンスの取得を促進」
つまり、既に民間のライセンスを所持している人用の講習が2022年7月までに決定し、その講習を受ければ二等操縦ライセンスを取得できるというもの。
民間ライセンスを所有していると、講習を数時間受けるだけで実技試験が免除になります。学科は全ての人が対象になりますので、スクールで講習を受けても学科試験は受験することになります。
既にスクールでの資格を取得している人向けの講習がどの程度の価格になるのかは明確になっていません。
国交省はスクールの価格に関しては感知しておらず、スクールが独自に決める金額になります。
国交省の資料にある「既存の許可承認制度の合理化・簡略化を図るため」という文言は、とにかく二等操縦ライセンス取得者を増やして航空局の負担を減らしたいという意図も感じられるので、そこまで高額な講習になるとは思えないのですが・・・。
ここまで来るまで結構長い道のりだったと思います。
国土交通省の「無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会」でオブザーバー8団体を対象に、制度全般や操縦ライセンスなどについてヒアリングが実施されているのですが、ここで民間団体から民間資格を国家資格としても良いのでは?といった意見などもだされていました。
気になる方は以下のリンクからどうぞ。
日本UAS産業振興協議会 (JUIDA)からは、航空局のHPに記載された講習団体の資格保持者については、国が管轄する試験(筆記試験、技能試験)を免除し、各講習団体での国指定の補講を受講することで円滑な移行ができるのではないか。といった意見。
日本ラジコン電波安全協会 (RCK)からは、既存の資格を有する者については過去の飛行実績を踏まえ、飛行時間により、国家資格に移行することで良いと考える。といった意見。
こういった意見がさまざま出された結果、今回のような流れになったのですね。
国家資格(一等、二等無人航空機操縦士)の内容
それでは気になる操縦ライセンスの中身について分かっていることを書いていこうと思います。
一等、二等無人航空機操縦士の名称は改正案に出てきますので、おそらく正式名称だと思います。
ライセンス区分
一等ライセンス(一等無人航空機操縦士)・・・カテゴリーⅢの飛行に対応
二等ライセンス(二等無人航空機操縦士)・・・カテゴリーⅡの飛行に対応
(種類または飛行の方法について限定を付すことができる)
操縦ライセンスは2種類作られます。
1つは第三者の上空を飛行する際に必要な一等ライセンス。もう1つが第三者上空は飛行しない際に使用可能な二等ライセンス。
第三者の上空を飛行する際には一等ライセンスと一種機体認証を受けた機体が必須とのこと。
一等ライセンスを持った上で各種の条件をクリアした際にのみ第三者の上空を飛行することが可能になるのだとか。
反対に二等ライセンスは現在のところドローン飛行に必須の資格ではなく、許可承認が不要になったりする便利な資格という位置づけのようです。将来的には必須になると予測されます。
二等ライセンスを所持していない人も、現状では所定の許可承認作業を行えば二等ライセンス所持者と同様の飛行が可能です。
ちょっと本題からは外れますが、登録免許税法の改正案を読むと、一等ライセンスは登録免許税が課税され、二級では課税されないようです。
操縦可能な機体の種類(以下に限定を付すことができる)
- 固定翼
- 回転翼(ヘリコプター型)
- 回転翼(マルチローター型)
ライセンスには操縦可能な機体の種類が付される可能性があるとのこと。自動車運転免許も大型や中型、1種2種の限定がありますからね。ドローンにおいても操縦技術が認められた種類に限って飛行が認められるようですね。
操縦できる飛行の方法(以下に限定を付すことができる)
飛行の方法に関しても限定を付すことがあるようです。もしも二等ライセンスを取得する場合は目視内の飛行や日中の飛行に関して限定が付されてしまったら、わざわざライセンスを取得するメリットは少ない気がします。どうせライセンスを取得するなら限定はなるべく解除した免許を取得したいものです。
試験内容
・学科試験
全国の試験会場のコンピュータを活用するCBT (Computer Based Testing) 方式を想定
<形式>
三肢択一式(一等:70問二等:50問)
<試験時間>
一等:75分程度
二等:30分程度
<試験科目>
操縦者の行動規範、関連規制、運航、安全管理体制、限定に係る知識等
・実地試験
・身体状態の確認(視力・色覚・聴力・運動能力等)
求められる知識・能力
取得可能年齢
有効期限
更新時は身体状態の確認と最新知識・能力を習得させるための講習の修了が要件とのこと。
受験制度
受験については国が指定する全国で1つの指定試験機関が設置され、この指定試験機関が試験事務及び身体状態の確認を行い、国が登録する民間機関(登録講習機関)が学科及び実地に関する講習を行うことができるとのこと。
指定試験機関(国が指定する一者)
自動車で例えると一発試験を受験する運転試験場のようなものでしょうか。
登録講習機関での講習を受けずに指定試験機関で受験することも可能となりそうです。
登録講習機関(国が登録する全国の民間講習機関)
登録講習機関については、3種類に分かれるようです。
- 一等(レベル4相当)までの講習が可能な機関
- 二等のみの講習が可能な機関
- 技能証明の更新に必要な講習が可能な機関
それぞれ民間するクールのレベルに応じて、どの講習機関になるのか決まるのかと思いいます。
2022年7月までに、それぞれの登録講習機関となるために必要な要件(実習空域、実習機、設備、教材、講師)が策定され、そのドローンスクールのレベルに応じた講習機関へと登録が出来るようです。
概要のみは決定しています。
<登録基準の概要>
・一定の大きさの実習空域
・直近2年間での一定の飛行実績等を有する18歳以上の講師
一等:(1) 直近2年の飛行実績1年以上の飛行経験+100時間以上の飛行時間
(2) 講師としての経歴1年以上
二等:(1) 直近2年の飛行実績6月以上の飛行経験+50時間以上の飛行時間
(2) 講師としての経歴6月以上・修了審査を安全かつ公平に実施できる実習機・講習に必要となる施設・設備、教材
機体認証・型式認証について
今回の法改正のもうひとつの目玉である機体の安全性に関する認証制度(機体認証)について。
カテゴリーⅢでの飛行に関しては機体認証を受けている機体を使用する必要があるそうです。つまり、カテゴリーⅢでの飛行では一等操縦ライセンスと第一種機体認証が必須になるということですね。
カテゴリーⅡでの飛行に関しては機体認証は任意だそうです。
ただし、機体認証を受けた機体を使ってライセンス保持者が飛行させる場合には、今まで行っていた許可承認の作業が不要になるなどのメリットが出てくるようです。
飛行させるドローンが機体認証を受けていない場合は、国交省から許可承認を受けて飛行することになります。これは今まで通りですね。
※国土交通省 無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会資料(令和3年3月)から抜粋
機体認証には第三者上空を飛行する際に必要な第一種機体認証と第三者を飛行しない第二種機体認証の2種類が設けられるとのこと。
第三者上空での飛行を想定している第一種機体認証では並列バッテリーやパラシュートなどの安全対策が施されていなければ認証されなそうな感じの予感がしますね。
かなり厳しいチェックを通る必要がありそうです。
また、機体認証は一度受ければずっとOKというわけでもなく、有効期間が定められるようです。
機体認証と型式認証の違い
機体認証は、ドローンの強度や性能について国が定める安全基準に適合するかどうかを検査して適合するかどうかをチェックしてもらうようです。
型式認証は、設計・製造者(メーカー)がドローンの安全基準を認めてもらってで製造し完成後に適合していることを検査して出荷するのかと思います。
こちらは現在「資料の一部を省略することができる無人航空機」で馴染みのある基準適合機の考え方に近いんじゃないですかね。
型式認証が取られた機体であれば初回(新品時)の機体認証が免除される方向性(第二種)のようですが、第一種に関しては型式認証が取られている場合でも、免除ではなく国による検査手続きを簡略化する方向性とのこと。
新しい制度ですから詳細は良く分かりません。
型式認証を受けている新品のドローン機体は機体認証が免除(一部?)される可能性はありますが、国は機体認証及び型式認証について有効期間を定めることにしています。
車の車検と同じく1~2年ごとに検査機関に持ち込んだり郵送したりして検査してもらうのでしょうか。
販売時には問題のない機体であっても、モーターの消耗やプロペラやバッテリー劣化の問題などのチェックのために定期的に検査を受ける制度は納得です。
私は半年~1年に1回、メーカーの定期点検に出しています。しっかり点検してもらわないと怖いですからね。
メーカーが検査機関としての役割も果たしてくれるとありがたいです。
実際の航空機も耐空証明と型式証明があり、1年毎に耐空証明を受ける必要があるそうです。ドローンも1年ごとになるのかな?
ドローンの機体検査は、国の登録を受けた民間機関が実施できる制度(登録検査機関制度)を創設するそうです。
機体の修理等も合わせて行うことを考えると販売・製造業者(メーカー等)が民間検査機関として代行してもらえると嬉しいなぁというのが個人的な感想です。
検査費用(法定費用)がどの程度の価格になるのか。このあたりも注目していきたい部分です。
運行管理のルールの明確化
運行管理のルール(補助者の配置による飛行経路下の人の立ち入り管理等)が法令で明確化されるとのこと。
また、飛行計画の通報(おそらくFISSかな)、飛行日誌の記録、事故発生時の国への報告も義務化されるそうです。
所有者の把握
機体に登録記号を表示するよう義務化されることは既に決定していますよね。今後詳細が決まりリモートIDの導入が始まってくるかと思います。機体内に設置されるものや外部機器を装着するなどして機体の登録番号等が専用機器などで把握できるようになる流れですかね。DJIの機体などはソフトウェアアップデートで対応する方向で進んでいます。
登録・許可承認の対象となる無人航空機(ドローン)の範囲が100g以上に拡大される予定ですので、予定通り100g以上に拡大されれば100g以上のドローンであればリモートIDの表示が義務化されます。
レベル分けやカテゴリー分けについて
レベル4やカテゴリーⅢと聞いてもピンとこない方に最初にレベルやカテゴリーについて整理しておきたいと思います。
2つの類型があるので最初に理解しておかないとちょっと戸惑います。
国交省はドローンの操縦形態の違いによりレベル1~4までの分類を行っています。また飛行リスクの度合いによりカテゴリーⅠ~Ⅲまでの分類を行っています。
レベル1~4は操縦形態の類型
目視かどうか、飛行エリアが有人地帯かどうか等によって決まっています
カテゴリーI~IIIは飛行リスクの類型
リスクの度合いで分類し、よりリスクが高く強い規制をかけるものがカテゴリーIIIになっています。
それぞれ、どのようなレベルの違いやカテゴリーの違いがあるのか、ざっくりですが書いてみようと思います。
レベル1~4(操縦形態の類型)
- レベル1 目視内での手動操縦(補助者を配置しての目視外も含む)
- レベル2 目視内での自動操縦・自律飛行(補助者を配置しての目視外も含む)
- レベル3 無人地帯における目視外飛行(補助者なしの完全目視外)
- レベル4 有人地帯における目視外飛行(補助者なしの完全目視外)
カテゴリーI~III(飛行リスクの類型)
- カテゴリーⅠ 人の少ないエリアでの日中における目視内飛行など
- カテゴリーⅡ 目視外など比較的リスクの高い飛行を行うが、補助者等を配置し立入管理措置を講じることにより第三者上空の飛行は行わない飛行
- カテゴリーⅢ 有人地帯での補助者なし目視外飛行やイベント上空の飛行など
カテゴリー分けの詳細
カテゴリーについては、ちょっと分かりにくい部分がありますが、国交省が分かりやすい解説図を作ってくれています。
図の指示に従って進めていくと、その飛行がどのカテゴリーに属するのか判断することが可能です。
※国土交通省 無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会資料(令和3年3月)から抜粋
カテゴリーⅢやカテゴリーⅡでの飛行要件について少し丁寧に書くと以下のような感じになるかと思います。
カテゴリーⅢ(第三者上空での補助者なしの目視外飛行・レベル4の飛行)
- 一等ライセンスを取得していること
- 第一種機体認証を受けている機体であること
- 飛行ごとに許可承認が必要
- 適切な運航管理体制が設けられていること
- 安全確保措置が講じられていること
など
カテゴリーⅡ(第三者上空を飛行せず、飛行区域の立ち入り管理措置を行う飛行)
- 機体認証及び操縦ライセンスを取得していれば許可承認が不要な飛行が新設された。
※補助者を配置するなどして飛行経路下への第三者の立ち入り管理措置を行う必要はある
- 機体認証及び操縦ライセンスを取得していない場合は、従来同様に許可承認を受けて飛行を行う。
この辺りについては以下の図が分かりやすくまとまっています。
※国土交通省 無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会資料(令和3年3月)から抜粋
航空法改正で大きく変化する2つ
今回の大きな変化としては以下の2つが大きいと考えています。
①第三者上空での飛行(レベル4)が可能になる
条件としては、無人航空機がカテゴリーIIIに対応する機体認証を受けていて、操縦者がカテゴリーIIIに対応する一等操縦ライセンスを有すること。運航管理体制(想定されるリスクを踏まえた飛行経路の設定や事故等を回避するための対処方法等を含む)の確認のため、飛行毎に許可・承認を受ける必要があります。
また、機体認証では第三者上空での飛行が行える第一種機体認証を取得した機体が必要になります。
②条件を満たせば許可承認手続きの省略が可能になる飛行が新設された
機体認証を受けた機体を、操縦ライセンスを有する者が操縦し、飛行経路下の第三者の立入りを管理する措置の実施等の運航ルールに従う場合、原則、許可・承認が不要となる飛行が新設。
※施行にあわせて登録・許可承認の対象となる無人航空機の範囲を100g(現行200g)以上に拡大されます。
機体認証を受けた機体で操縦ライセンスを持っている人が運航ルールに従って飛ばす場合に許可承認が不要になるのは以下の飛行とのこと。
○人口集中地区
○夜間飛行
○人・物件30m未満
○下記●に該当しない目視外飛行
※補助者の配置による飛行経路下の人の立入管理等は必要です。
以下の場所や飛行の方法では、一部の許可承認作業が省略されることになるようです。
●空港周辺
●高度150m以上
●イベント上空
●危険物輸送
●物件投下
●一定の重量以上
空港周辺や高度150m以上の飛行に関しては管轄の空港事務所と調整する必要がありますし、危険物の輸送などは安全確保措置について飛行毎に確認する必要がありますから当然と言えば当然ですね。
どの飛行がライセンスを所持した場合に許可承認が省略できるのか、一部だけ省略できるのかを分かりやすく図解されたものが以下になります。
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