大型ストロボに装備されているリフレクターやアンブレラを使用する際の距離について少し書いてみようと思います。
リフレクターに関しては、深さや口径が違ったり、そもそも必要?という疑問がありますよね。
アンブレラに関しては、どの程度ストロボと離してセッティングすれば良いの?という疑問があったりします。
リフレクターとは
モノブロックストロボやジェネレータタイプの大型ストロボのヘッドにはリフレクターという装置がついています。通称「お釜」と呼ばれることもあって、お釜のような形をしている円形の反射装置です。
似た構造のものであれば、懐中電灯や車のヘッドライトなどでもよく見かけます。
ストロボヘッドに装着するリフレクターは光を効率的に反射させることで、結果として集光された光を狙った被写体に当てることが可能です。これがないと光源を前方に向かって照射することが難しくなります。
通常はストロボヘッドを購入すると最初から装着して販売されています。そのため、絶対に使わなければいけないと感じている方も多いと思います。確かに非常に重要な装置でストロボを使用する際には必須の備品であることに間違いはないのですが、絶対に装着しなくてはならない!というものでもありません。
リフレクターと一口で言っても、実は形状がいくつもあります。
違いが分かりやすいように大中小の3種類のリフレクターを用意しました。
それぞれリフレクターの深さや大きさが異なっています。
リフレクターを装着しない場合。そしてそれぞれのリフレクターによってどのように光が変化するのか順番に書いていこうと思います。
リフレクターをストロボから外した時には光源を遮るものが何も存在しませんから、フラッシュチューブから出る光は、各方向へ拡散していきます。リフレクターが無いと、狙った方向に光を向けることが難しくなります。
ちなみにフラッシュチューブとは大型スロトボの光源です。下のような形をしています。
真ん中のライトはモデリング用ランプでストロボではありません。周りをグルっと回っているチューブ状のものがストロボヘッドになります。
このストロボヘッドから発光する光を有効的に集め被写体に当てられるようにするのがリフレクターの効果のひとつです。
リフレクターの違いを比べる前に、リフレクターを装着しないとどうなるのか。
それを最初に見ていこうと思います。
リフレクター無しのストロボ光
ストロボヘッドのリフレクターを外し、壁に向かって発光させてみました。
次は壁に横向きに配置して発光させてみました。
光が非常にムラなく綺麗に広がっています。180度以上に広がり、わずかながらも後方にまで光が広がっているのが良く分かります。
これは発光管であるフラッシュチューブ全体が光り前方にも側方にも後方にも、まんべんなく光が広がっているからです。
リフレクターを使わない撮影もあり
私はリフレクターをあえて外して撮影することがあります。
それはこの拡散光を活用したいからです。光を部屋全体に回したい時などに使うことが多いです。
リフレクターの前にクシャクシャにしたトレーシングペーパーを膨らませてかぶせる、通称「提灯ライティング」でも光が回りやすくなります。
↓参考ですが、通称「提灯」と呼ばれるもの。ヘッド部分にトレーシングペーパーをかぶせます。実際に使用する際にはトレーシングペーパーにカッターなどで切り目を入れておくと熱がこもらなくなります。
提灯を作るのは、若干ですがひと手間かかります。
なのでリフレクターを外して手っ取り早く光を回すこともあります。その際にはフラッシュチューブからの光が直接被写体に当たらないように工夫することが多いです。提灯よりもリフレクターを外した方が更に拡散するので、使い方にコツがいりますが盛大に拡散させたい時には外します(笑)
リフレクターを外した時に光がどのように拡散するのか事前に理解していると、現場で判断がつきやすくなります。
リフレクターを外して使用する際の注意点
リフレクターを外して使用する際に気を付けることは、とにかく発光管であるフラッシュチューブを絶対に触らないということ。チューブ管を触る時には綺麗な手袋などが必要です。
フラッシュチューブはガラスで出来ていて非常に繊細なのと、手の油や汚れが付くと、そこを中心に割れたり焦げたりすることがあるということ。そこまで悪い状態にならなくてもチューブの寿命が短くなる可能性がありますからね。
チューブを触らないように新人の時に教えられました。
ストロボヘッドの中にはチューブに誤って触ることが無いように、ガラスカバーが付いているものもあります。これなら触る危険性はありませんね。
若い方には経験がないかも知れませんが、フラッシュって焦げたり、非常に大きな爆発音を発して壊れることがあります。
その原因はさまざまだと思うのですが、フラッシュチューブを汚したり傷をつけたりすることも一つの因子になりますから、極力避けるようにしましょう。
リフレクター1を使用した光
最も深さが浅いリフレクターになります。口径も小さいですね。
このリフレクターを使って発光させると下の写真のようになります。
【特徴】
深さ:4.5cm
口径:11cm
リフレクター無しの状態と比べると光に芯が出来ていることが分かると思います。また横位置で撮影したものを見るとヘッドの真横より前方に向かってだけ光が伸びていることが分かります。
リフレクターが無いときには側方のみならず後方にも光が伸びていましたが、大きく光の広がり方が変わったことが分かると思います。
また、次に比較するリフレクター2やリフレクター3と比べると非常に光が広がっているのがわかります。
リフレクター2を使用した光
先程より少し深く、口径は同じ大きさのリフレクターになります。
このリフレクターを使って発光させると下の写真のようになります。
【特徴】
深さ:6cm
口径:11cm
こちらは、先ほどのリフレクターと比べると口径は同じ。深さだけが一回り深くなっているだけです。
リフレクターの見た目はリフレクター1と大きな違いはありませんが、照射される光は少し狭まっているのが分かります。先ほどより少し集光されている感じです。
リフレクター1と比べると少し深くなっただけですが、結果としては光の広がり方に見た目以上の大きな違いが出るのが分かって頂けたと思います。
リフレクター3を使用した光
こんどはリフレクター3になります。
1,2と比べると更に深く、口径もかなり大きくなっています。
このリフレクターを使って発光させると下の写真のようになります。
【特徴】
深さ:10cm
口径:18cm
3種類の中では一番大きいですが、更に大きい口径30cmを超えるリフレクターもあります。
少し余計な話ですが、ソフトリフレクター(ビューティディッシュ)は更に口径が大きくなります。だだ、ビューティディッシュは一旦光を反射させるので、ここで紹介するリフレクターとは構造が違います。
先ほどの2つのリフレクターと比べると、深く大きいリフレクターです。1,2と比べると、やはり大きな違いが出ています。
1,2と比べるとかなり光が集光されています。側面から見た光も、横には広がりにくく前方に向かって強く光が伸びているのが分かると思います。1,2と比べると見た目にも大きな違いがありましたが、実際に光らせると、やはり大きな違いとして出てきます。随分と違いますね。
全ての光の違いを一覧で比較
それぞれの違いを比べやすいように並べてみました。
どうでしょうか?光の芯の出方や拡散具合の違いが分かって頂けるでしょうか。
リフレクターが無いときには最も光が拡散し、リフレクターが大きく深ければ光が集光されやすくなることが分かると思います。深さと口径の大きさが、光の集光度合いに、こんな違いになって現れるのですね。
フラッシュチューブから発した光は、リフレクターで反射し前方へ飛び出していきます。光源からリフレクターへ光が入射する角度と同じ角度で反射していきます。
リフレクターのカーブによって光の集光具合に変化が出てきますが、基本的には深く口径が大きければ集光しやすくなってきます。
少し余計な話ですが、リフレクターで集光された光よりも、更に一点に光を集中させたい場合は、グリットやスヌートというアダプターを使うと余計な光をカットでき被写体の一部分に光を当てることが可能になります。
アンブレラをセッティングするときは?
次はヘッドに対してアンブレラを使ってみます。通称「傘」と呼ばれるものですね。
アンブレラは光源を一度反射させて被写体に当てるために使用するものです。アンブレラ使用の際にはヘッドをどれだけアンブレラに近づけるかはとても大事になります。
モデリングランプの光がアンブレラから漏れていなければOKという話もありますが、モデリングランプとストロボライトは光源が完全に違いますので、完全一致にはなりませんので注意が必要です。
アンブレラから光がもれすぎていないかチェック
特にリフレクターを使用していない場合、アンブレラまでの距離が遠いと光が漏れてしまって、前方に光が飛ばなくなります。リフレクターを装着しないでアンブレラを離して使用した例がこちらです。こんな使い方する人はいないと思いますが・・・。
アンブレラをヘッドに近づけて使用した例がこちらです。
しっかりと光がアンブレラ前面に向かって伸びているのが分かります。
これはリフレクターがあっても、似たようなことが発生します。いくらリフレクターをつけていてもアンブレラから離しすぎてしまうと光がアンブレラから漏れてしまい光の損失が生まれます。ただ近づけすぎるとアンブレラ全面に光が当たらず光源が小さくなってしまします。難しいですね。
アンブレラが大きければ、その大きさ分だけストロボヘッドを離して使用する必要が出てきます。
ヘッドと各種アンブレラで、どの程度の位置(深さ)でセットするのが一番良いのか事前にテストして使うようにしています。
ストロボヘッドにリフレクターをつけた状態でアンブレラから少しずつ距離を離した状態の写真も参考に載せておきます。
これはリフレクターによって結果は違いますので、あくまで一例になります。
リフレクターを装着していても、アンブレラをあまりに離してしまうと、せっかくのストロボ光が漏れてしまい後方にも広がってしまうことが分かります。
もちろん、少し光を漏らしてでもアンブレラ全面をギリギリまで発光面として使いたい場合は、少し離して使う方法が正しいです。ですが、意図せずに光が漏れてしまっている場合には注意が必要ですね。
暇な時にアンブレラとストロボヘッドの距離を色々と変化させて撮影して光が漏れすぎていないか確認しておくと良いと思います。
アンブレラ全面に光が当たるように、なおかつ光の漏れが大きくなり過ぎないように、一番良いポジションを知っておくことが大事だと思います。
で、その時にはリフレクターの深さや口径の違いによってアンブレラとの距離が変わって来ますよということです。リフレクターの話が長くなりましたが、リフレクターの話をしておかないと、アンブレラとの距離だけ書いても勘違いが発生してしまいますからね。
注意:ストロボヘッドをアンブレラに近づけ過ぎると影が強くなります
注意する点としては、光漏ればかり気にしてアンブレラに近づけ過ぎるとヘッドからの光が傘の中心だけにあたり、傘全体に光があたらなくなります。
上の作例を見て頂ければ一目瞭然だと思がいますが、中心部だけに光が当たる状態でセッティングしてしまうとアンブレラ全体が光源とならずに光源面積が小さくなり、結果として硬い光になってしまいます。影が強く出てしまっていますよね。
これだと、せっかくアンブレラを使ってライティングを組んだのにもったいないです。
近づきてもダメ。遠すぎてもダメ。難しいかと思いますが、一番良い場所を確認しつつライティングを楽しんで頂ければと思います。
ここは非常に重要なポイントですので、この部分だけを解説した記事を書きました。
下記の記事も一緒にご覧頂ければと思います。
アンブレラ撮影時にリフレクター有/無しでテスト
個人的に気になったので、アンブレラをリフレクター有/無しの状態で撮り比べてみました。
普段、アンブレラ撮影する際にリフレクターを外したりはしていません。リフレクターを外す時は大きなディフューザー越しや壁バウンスをする際などです。
でもアンブレラの時にリフレクター外したら結構いけるんじゃない?と思ったので。以下が比較した作例です。
- モノブロック
- リフレクタ無し+アンブレラ
- ISO400/F10
- モノブロック
- リフレクタ有+アンブレラ
- ISO400/F10
- モノブロック
- リフレクタ有+アンブレラ+ディフューザー
- ISO400/F10
ディフューザーを付けると暗くなります。同じ光量で撮影していますので1段ほどアンダーになってます。
次に明るさを同程度にPhotoshopで合わせたもので比べてみます。
リフレクター有/無しを比べると、付けない方が若干影が薄く柔らかい印象の光になったように感じます。
光量もリフレクターを付けない方が、若干ですが強いようです。ただこれは、リフレクターを付けない場合、ヘッド部分を傘に近づけて撮影する必要がありますので、それが影響している可能性もあるかと思います。
人物撮影など複数のシチュエーションで撮り比べていませんので、善し悪しまでは言えませんが、色々な機会にリフレクターを外してアンブレラ撮影をしてみようかなと感じた簡易テストでした。
結論がある話では無いので、まとめ方が難しいのですが、リフレクターによる光の違いや、リフレクターを使わない時、そしてアンブレラを使ったとき、光がどんな変化をしているのか事前に確認しておくとライティング組みやすくないですか?という話でした。
コメント
コメント一覧 (2件)
スマホでFacebookのリンクからブログを拝読しましたが、パソコンブラウザから再訪しようと思ったらFacebookで見つからず、自分のエキサイトブログに置いてたOrcaさんのリンクから行こうとしたらパスワードが必要とはねられ、仕方ないので「デジタル@備忘録」で検索してやっとたどり着きました。
ブログ、お引っ越しなさっていたのですね?
さて、リフレクターの話ですが、この記事はアンブレラバウンスする場合、どのリフレクターが良いのか、アンブレラまでの距離はどれくらいが良いのかを知るために、まずリフレクターの話から入ったのだと思いますが、もしリフレクターの話に特化するなら、光の「質」に言及することも必要かと思います。
アンブレラの場合は、アンブレラ全面に光が反射するようにすれば、アンブレラの面積全面が面光源になるので、使うリフレクタによって挿す深さは変わりますが、光の質は変わらないと思います。
アンブレラで光の質を変えるには、面積を大きくする、つまりアンブレラを大きくする必要があります。
よく光が硬いとか軟らかいとか言いますが、それは被写体のハイライトとシャドウの差、背景に伸びた影の濃さなどによって判断されていると思います。
これは被写体側から見た光源の大きさに依存しています。
つまり、被写体側から見て光源が小さいほど陰影が付いて影は濃く出るのに対し、光源が大きくなるにつれ、明暗差は少なくなり影も薄くなります。
同じ面積のアンブレラを使った場合でも、被写体から離せば光は硬くなり、近づければ軟らかくなります。
アンブレラバウンスの場合、多くの人が勘違いしてますが、ディフューザーによって光が柔らかくなるというのは間違いです。
被写体までの距離が同じで、アンブレラが均等に光を反射している場合、ディフューザーなくても光の質は変わりません。
多くの場合、傘全面に効率よく反射させられているかが考慮されず、ディフューザー掛ければ軟らかくなると思われている様ですが、確かに傘全面が効率よく反射させられていなくてもディフューザーによって拡散が補われるので、軟らかくなったような印象があります。
でも試してみれば分かりますが、傘全面に効率よく光が当たっていれば、ディフューザーの有無による陰影の差はありません。
むしろディフューザーを掛けることによるエネルギーロスが発生するので、より出力を上げる必要が出てきます。
被写体から見た光源の面積という観点からすると、ソフトボックスやトランスルーセント傘でも、発行面が均一な照射をしていれば、傘でもソフトボックスでもトランスルーセントでもライティング効果には大差がないと思います。
だだ、これも多くのところで曖昧にされてますが、狭い室内、白壁のスタジオ、黒塗りのスタジオ、屋外によって効果が異なります。
被写体側から見た光源の大きさに依存しているのは確かですが、黒塗りスタジオ、屋外は周りに反射を補うものがないのでこの理屈が通りますが、狭い室内や白塗りスタジオでは、傘とソフトボックスなどでは光の回り方が異なってきます。
Orcaさんの記事でも、光を回したいときにリフレクターを外すと書かれてますが、それは室内で光が壁や天井に反射して、結果として大きな面光源になっているためです。
反射がない屋外でそれをやると、逆に点光源となって影は濃く出るはずです。
スタジオではバウンスやディフューズされた光を用いるのが通常ですが、時に太陽の直射光で撮ったような光を求められることもあります。
その際は光源は小さい方が良く、リフレクターも拡散しないタイプの方が良いと思います。
リフレクターのありなし、拡散の仕方、径の大きさなどは、効率、つまり得られる光量の差も関係してきます。
お書きのようにリフレクターがあったほうが集光するので光量は多くなります。
ですので、傘全面に当たれば傘バウンスとしての光の質には変わりはないと言いましたが、光量をロスすることなく効率よく反射させたいと思ったら、それにあったリフレクターを使うのが良いと思います。
ブログ拝読して思ったのは、配光については書かれてるが、強さ(光量、F値)や光質については、言及が及んでいないなということでした。
さ〜、この続きどうしますか?w
傘の面質、深さなどによって、ライティング効果は変わるのか否か、気になりますよね。
検証期待してます。(丸投げ。w)
やばーい。平尾さんに見つかってしまいました笑
パスワード設定なんてした覚え無いんですが、何でですかね?
あ、昔のFC2ブログのアドレスだとパスワードになってるかもです。すいません。
平尾さんのコメント、めちゃくちゃまとまってて最高です!記事で書いてない大切な部分、完全に補完してくださってて、ありがとうございます♪
もう、書いてて疲れて、この辺りでって感じで投稿しましたから笑
ソフトボックスとか書き始めると、中のティフィザーの違いとか、傘との指向性の比較とか書かなくちゃいけないから割愛しました。ディープアンブレラとか含めて書く必要出そうだし(^^;
トランスルーセントも外せなくなってきますよねー。
そうなると、まさに部屋の構造というか広さと部屋の反射状況とかで違ってくるしー。
で、本題ですが、とりあえず今日は寝ます!今朝4時起きだったんで。言い訳。
大きな宿題を出されたので、追記?別記事で書けるか、ゆっくり考えます(^^;
でも傘の面積によって質が変わるかは平尾さんがコメントで答えて書いちゃってますよね。
個人的に検証しきれてないのは、リフレクター無しのアンブレラと、リフレクター有りアンブレラの違いですかね。
宿題ありがとうございます!