アンブレラを使ったストロボ撮影ライティングの基本

ポートレート撮影や物撮り撮影など、ちょっと良い光を使って撮影しようとなると、アンブレラという通称「傘」と呼ばれるライティング機材を使って撮影する機会が増えてきますね。
このアンブレラ。非常に安価で買えますし、ネットでは使い方なども良く見かけます。ですが、アンブレラ正しく使えてますか?
アンブレラといっても、大きさも様々ですし、内側が白色や銀色、乳白色なトランスルーセントと呼ばれるもの、ディープ型と呼ばれる深型など色々種類がありますね。
ですが、最も一般的な内側が白色のアンブレラの使い方が分からずに先に進まないほうが良いです。基本的なアンブレラ=傘の使い方を、ちょっと玄人向きではありますが書いていこうと思います。

上の2枚の写真。同じアンブレラを使って、同じニコンのストロボを使って、同じカメラで撮影しました。ディフューザーは使っていません。同じアンブレラです。
後方に落ちる影に違いがありますが、同じ機材を使ってもアンブレラのセッテイングひとつでここまで変わってしまうものなんです。
(美女の作例でなくて申し訳ないです。もっとも比較しやすい被写体を身近なもので選んだらこうなりました)

なぜ、こうした違いが生まれてくるのか、簡単に書いていこうと思います。

もくじ

アンブレラ撮影に必要なもの。スタンドやワイヤレストリガーなど

まず最初に、アンブレラ撮影には何が必要なのか。最初の部分から書いていきます。

アンブレラ撮影の基本セット
①ストロボ

メーカー純正のストロボやサードパーティ製のストロボなど光を発光するものが必要です。モノブロックタイプやジェネレータータイプの大型のストロボでも使用しますが、今回はスピードライトと呼ばれるカメラの上部取り付けて使うタイプの一般的なストロボでテストを行っています。

②アンブレラ

光を反射させるためのアンブレラです。内側が白色、銀色、乳白色のもの、それに大きさも色々あります。最も一般的なものは内側が白色で大きさは開いたときの直径が80cm~100cmぐらいだと思います。大きすぎると取り回しに苦労しますし、スタンドもそれなりに安定したものが必要になってきますから、最初は大きくても100cm(40インチ)ぐらいで試したほうが良いかと思います。

③ライトスタンド

アンブレラを自立させるために必要なスタンドです。Amazonで「ライトスタンド」と検索すれば色々と出てきます。価格は2000円~10000円程度のものが多いですね。
軽すぎるとアンブレラを取りつけた時に倒れやすくなりますし、重すぎると持ち運びが大変だったりします。軽いスタンドの場合は重りを取り付けて安定させる方法などもあります。

アンブレラホルダー

ライトスタンドにストロボとアンブレラを取り付けられるようにする部品です。これがないとスタンドにアンブレラとストロボを同時に装着することができません。このホルダーは種類が色々とあって悩むと思うのですが、最初は小型で取り回しに便利なNeewerのアンブレラマウントホルダーのようなもので良いと思います。NeewerのアンブレラマウントホルダーはAmazonで2つ取り扱いがあるのですが、リンクで紹介していないもう1つのマウントホルダーは不安要素が多いので購入はしないほうが良いと思います。ストロボ固定部品がネジ式で脱着できるようになっているので逆に不安定でストロボが真っ直ぐアンブレラに向かないことがあります。私も購入してから失敗したと後悔しました。
購入するならリンクで紹介したマウントホルダーの方が良いと思います。
アンブレラホルダーにはライトスタンドに取り付けるためのスピゴット(ダボ)が付いているものと、逆にスピゴット(ダボ)を受ける為の穴の空いたものの2通りがあります。上のNeewerのアンブレラマウントホルダーはスピゴットを受ける穴が空いたものになります。

ライトスタンドにも最初からスピゴット(ダボ)が付いているものと、逆にスピゴット(ダボ)受け穴の空いたものがあります。
ライトスタンドがスピゴット(ダボ)受け穴の空いものであれば、アンブレラホルダーは最初からスピゴット(ダボ)が付いているものを選ぶと簡単に装着できます。
ライトスタンドに取り外しの出来ないスピゴット(ダボ)が付いているものもありますので、その場合はアンブレラホルダーはスピゴット(ダボ)受け穴の空いたものを選ぶ必要があります。
両方ともに穴が開いている場合には両オスのスピゴットを購入すれば使えるようになります。

⑤シンクロコードもしくはワイヤレスフラッシュトリガー

アンブレラでの撮影ではストロボをカメラから取り外して使用することになります。そのため、カメラの上部にあるシンクロ接点にストロボを取り付けていなくても、カメラのシャッターを切った時に同時にストロボを光らせる何かが必要になります。
その「何か」というのがシンクロコードと呼ばれるストロボ同調用のコード、もしくはワイヤレス(電波)でストロボを同調させるためのワイヤレスフラッシュトリガーと呼ばれる機器になります。
それぞれメリット・デメリットがあります。

シンクロコード
シンクロコードの場合は、シンクロコードを差し込む接点がカメラ側にもストロボ側にも必要になってきます。接点が両方に存在しない場合は使えません。また接点が接触不良になることがありますので、予備のコードを持っておく必要があります。しかしメリットとしては安価で手軽に使うことができます。

ワイヤレスフラッシュトリガー
ワイヤレスフラッシュトリガーは発信側(カメラ側)と受信側(ストロボ側)に一つずつ必要になります。ストロボに受信機が内蔵されているものもありますが、その場合は対応した発信機が必要になります。価格はコードと比較して高くはなりますが、接触不良の発生も少なく物理的なコードが無いのでコードの長さを気にする必要がありません。最近ではシンクロコードよりもワイヤレスフラッシュトリガーを使うことのほうが一般的に多いと思います。

【その他】
カメラ上部に装着したストロボ本体を発光させ、離した場所にセッティングしたストロボを、その光に反応させることで発光させる機構なども存在します。ニコンですと「SU-4」というモードになります。こういった受光反応システム的な発光方法もストロボによってはあります。ただ最低でもストロボが2台必要です。現場では多用されるひとつの手法ではあるんですが、ここでは詳細を省きます。

アンブレラ撮影を行うためには上記セットが必要になります。
それぞれが非常に深掘りできる内容なのですが、なるべく分かりやすく簡易的に説明してみました。
それでは、実際にアンブレラでの撮影技法について話しを進めていこうと思います。

撮影用アンブレラ=傘には全面ムラなくストロボ光をあてて使う

まず、アンブレラにはストロボからどういった光が照射されているのか見ていこうと思います。
アンブレラを有効活用するためには、どうストロボの光を当てるのかが重要になってくるからです。

今回はNikonのスピードライトSB5000という純正ストロボを使ってテストしていきます。
ストロボにはニコンに限らず照射角度を変化させる機能がついています。ニコンSB5000では「ZOOM」という名前になっていますが、ZOOMを変化させることによりストロボから発する光の照射角を変化させることが出来ます。

下の写真はストロボの背面液晶を写したものですが、ZOOM24mmと表示されています。これが照射角になります。
ZOOM24mmとは、広角レンズである24mmレンズを使用した時に四隅まで光を当てることが出来ますよ。ということです。逆にZOOM85mmと表示された状態ですと85mmレンズを使用した際に適切になる配光ですので、24mmレンズといった広角レンズを使用し撮影した場合は、四隅まで光が当たらずに中心部分だけが明るくなることを意味しています。

アンブレラ撮影する際には、この照射角を気にしたほうが良いケースが多々あります。では、なぜ照射角を気にする必要があるのか、順を追って見て行こうと思います。

アンブレラにストロボを正しくセッティングするための基本

以下は、ストロボをアンブレラに向かって照射している写真です。それぞれ照射角(ZOOM)を変えて撮影しており、アンブレラにあたる光がどのように変化するのかを分かりやすく撮影しています。
アンブレラの大きさや、アンブレラとストロボヘッドの距離などによって結果は若干変わってきます。
全てのアンブレラ撮影において以下と完全に同結果となるとは思わないでください。ただし、どんなアンブレラやストロボを使おうが基本的な考え方は同じですのでご安心ください。

照射角(ZOOM) 24mm

照射角24mm
ストロボの最広角での発光です。アンブレラのほぼ全面に強い光が当たっていることがわかります。最も良い配光です。

照射角(ZOOM)50mm

照射角50mm
アンブレラ中心に明るい四角型がみえます。これがストロボの最も強い発光部です。24mmと比べると中心に少し寄ってしまっています。

照射角(ZOOM) 85mm

照射角85mm
更に強い光の四角形が中心部に寄っています。これですとアンブレラの半分も使用していませんから、あまりにもったいない配光です。

照射角(ZOOM)120mm

照射角120mm
照射角(ZOOM)が狭くなるに従って、当然ですが傘の中心部にしか光が当たりません。200mm以上にしても当然同じことが発生します。大きなアンブレラを使用した場合などは、この損失はさらに大きなものとなります。

次に、こうした照射角による違いによって、実際の撮影ではどのような違いとして現れてくるのかを比較してみようと思います。アンブレラ中心部だけに当たっている場合と、アンブレラ全面に光が当たっている場合、どんな差が生まれるのか気になりますよね。

アンブレラ撮影時 ストロボ照射角による光の質の違い

実際に撮影した際の光の質に移っていきます。
ZOOM24mm(照射角24mm)にした時、アンブレラ全面に光が当たっていました。もっともアンブレラを有効に使っている配光です。
ではその光で撮影したものが下の右側の写真になります。被写体の手前右側から光を当てていますので、左後方に影が出ます。
この影を覚えておいて下さい。

アンブレラの光の状態

左のアンブレラ配光で撮影した結果画像

ZOOM 24mm
アンブレラ撮影 24mm照射角で反射

ここから下は、照射角をどんどん狭くスポット光に変えていきます。
分かりやすいように左側はアンブレラの光。右側は撮影結果の写真を載せています。
注目は被写体の缶の左後方へ伸びていく影の状態です。これを比べてみてください。

ZOOM 50mm
アンブレラ撮影 50mm照射角で反射
ZOOM 85mm
アンブレラ撮影 85mm照射角で反射
ZOOM 120mm
アンブレラ撮影 120mm照射角で反射

いかがでしょうか?
照射角が狭くなりZOOMされていくほどに、影が強くなることがお分かり頂けたでしょうか?
傘の全面に光が当たっていないので、反射されてくる光も広い面光源では無く、非常に鋭い光になってしまいます。それが影の現れ方たとして良く出ています。

つまり傘を使ってライティングしても、傘の一部しか使わなかれば非常に硬い光として反射されてしまうということ。
試しに傘を大きくして実験してみると、私の話している意味が良くわかるとおもいます。
ということで、今度は同じセッティングで傘だけ一回り大きくして試してみます。

傘を大きくしても正しく使わなきゃ効果ゼロ

さきほどは、アンブレラに当てる照射角を広角にすることでアンブレラ全面に光が当たったり、被写体の影が柔らかくなることが確認できました。
反対に照射角を鋭くZOOMさせアンブレラに光を当ててしまうと、アンブレラ中心部にしか光が当たらず、アンブレラを有効活用できずに被写体の影が強く出てしまうこともわかりました。

そこで、ひとつの実験をします。
アンブレラを大きくすれば光が柔らかくなり被写体の影も柔らかくなるのでは?という疑問に答えるもの。
光を柔らかくするには発光面を大きくするというセオリーがあります。発光面を大きくすれば光が柔らかくなるという現象があるので、発光面であるアンブレラを大きくすれば当然光が柔らかくなり影も薄くなるという想定です。


最初に結論を言えば、アンブレラの中心にしか光が当たっていないのに、アンブレラを大きくしても影は、さほど柔らかくなりません。
大きいアンブレラを使うには、それなりにテクニックも必要ですしアンブレラ全面に光を当てた状態でなければ意味が無いんです。
では比べてみましょう。

左側は比較元の写真

全ての設定は左側と同じで傘だけ一回り大きくした

24mm照射角で反射 
24mm照射角で反射 
傘だけ一回り大きくした
50mm照射角で反射 
50mm照射角で反射 
傘だけ一回り大きくした
85mm照射角で反射
85mm照射角で反射 
傘だけ一回り大きくした

どうでしょう。(アンブレラを交換したことで色の変化が生まれてしまったことはお許しください)
傘を少し大きくした程度では大きな違いは生まれないことが分かって頂けたと思います。もちろん2倍も3倍もあるアンブレラに変更したら、もう少し変化があるのですが・・・。
少し大きくしただけでは大きな変化はあまり望めません。

大きな傘を使うと当然ながら中棒(シャフト)の部分も長くなります。大きな傘全部に光を当てるには長くなった中棒を上手に使ってアンブレラホルダーに深く差し込まずにストロボヘッドの光がアンブレラ全面に光があたるように調整してみて下さい。この作例では大きな差は生まれていませんが、傘の直径差が大きく変化し、アンブレラに正しく光を当てればそれなりに変化します。
今回は正しく使わなければ効果は変わらないことを実験したかったので、少し大きなアンブレラを使った際に、ほんの気持ちだけ深めに中棒をアンブレラホルダーに差し込みました。間違った使い方です。こうして間違った使い方をすると機材の持っている特徴を活かしきれず、光に変化は生まれにくくなります。

では、どうすればもっと光を柔らかくできるでしょうか。同じ大きさのアンブレラを使っても光の質をもっと変化させる方法があります。
次はアンブレラのセットを被写体に近づけてみます。

アンブレラを被写体に近づけてみる

今度はストロボをセットしたアンブレラを被写体に近づけてみます。
いままでは被写体からアンブレラまで約1.5mほどの距離でした。
今度は一気に約0.5mまで近づけてみます。50cmと150cmでは大きな違いがあります。光の質も大きく変わると思いますが、その点にご注目下さい。

アンブレラを近づけて場合、光が強くなりますので、見た目があまり変わらないようにカメラの設定値のみ変更しています。

約1.5mの距離から光をあてている

約0.5mの距離から光をあてている

24mm照射角で反射 
24mm照射角で反射 
アンブレラセットを被写体に近づけた
50mm照射角で反射 
50mm照射角で反射 
アンブレラセットを被写体に近づけた
85mm照射角で反射
85mm照射角で反射 
アンブレラセットを被写体に近づけた

大きな違いが出ていることが分かります。アンブレラセットを近づけた右側の写真を見て下さい。被写体である缶の左後方に出ている影が薄く短くなっています。
アンブレラを近づけたことによって、光源と被写体との角度が変化しないよう、アンブレラを設置しているスタンドの高さは目測ですが調整しています。それでも、これだけ大きな変化が生まれていますね。
照射角が変化しても、傘を近づけた方は、それほど影が鋭く変化していません。

これはアンブレラを被写体に近づけたことにより発光面が相対的に大きくなったからです。
1.5mの距離でアンブレラを少し大きくするよりも、距離を半分以上縮めて50cmの距離までもって来たほうが圧倒的に発光面は大きくなりますよね。
発光面が大きくなるということは、ソフトな光になりやすく光も回りやすくなります。

まだまだ駆け出しだった20年以上前、第一線で活躍しているコマーシャル系カメラマンの方から、「バンクはもっと近づけないと旨味が無いよ」とご指摘を受けたことがあります。その当時は、そんなものかな?と軽く聞き流していましたが、ライティングを学ぶうちに、その一言が非常に重要な言葉であったことを知りました。

いくら大きなバンクやアンブレラを使っても、使い方を理解していないと、思った感じの光の質を出すことは出来ないということですね。硬い光を作りたいのか、柔らかい光を作りたいのか、光を回したいのか、指向性のある光を作りたいのか、撮影によって作りたい光はさまざまです。

スピードライト+アンブレラという非常に基本的なオーソドックスなライティングであっても、その性質を理解していないと、思い通りの光は生み出せないかも知れません。

アンブレラにディフューザーを装着 どのような違いが生まれるか

次にアンブレラにディフューザーを装着して比べてみましょう。アンブレラは被写体に近づけています。
ですので、既に影は薄くなっていますが、ディフューザーを装着するとどう変化するでしょうか。
撮影する位置は同じ。アンブレラの位置も同じです。照射角のみ変更して、ディフューザー「あり」と「無し」を比べてみます。

左側は比較元の写真

アンブレラにディフューザーをつけたもの

24mm照射角で反射 
アンブレラセットを被写体に近づけた
24mm照射角で反射
傘+ディフューザー
50mm照射角で反射 
アンブレラセットを被写体に近づけた
50mm照射角で反射
傘+ディフューザー
85mm照射角で反射 
アンブレラセットを被写体に近づけた
85mm照射角で反射
傘+ディフューザー

ディフューザーをかぶせると照射角に関係なく影が薄くなるのが分かります。
それを証拠に照射角200mmにZOOMした写真でも比べてみましょう。

200mm照射角で反射 
アンブレラセットを被写体に近づけた
200mm照射角で反射
傘+ディフューザー

ディフューザーを装着することで光が柔らかくなると同時に照射角による違いがほぼ消えました。これがディフューザーの大きな違いかなと思います。
部屋が狭く壁面が白色場合は拡散光が更に生まれるのでディフューザーの効果がより大きくなると思います。
ディフューザーの場合は光が弱くなることと、ディフューザーによっては色温度等に変化が生まれるので(アンブレラによっても個体差はありますが)その点は頭に入れておいたほうが良いと思います。

拡散光をアンブレラを作りたい場合、ディフューザーを装着する方法以外に乳白色のトランスルーセントというアンブレラを使う方法もあります。これはストロボ光を反射させて使うのではなく、ストロボ光を拡散して使用するため、通常のアンブレラとは違ってアンブレラ自体を被写体に向けて使うことになります。指向性の低い非常に拡散した光が生まれます。今回の記事とは趣旨が若干ずれてくるのでここでは割愛しますが、アンブレラ撮影は簡単のようで色々と奥が深かったります。
皆さんのアンブレラ撮影で気にしている点や、こんな面白い使い方があるよなんて情報があれば色々とコメントに書いて頂ければと思います。

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この記事を書いた人

Orcaのアバター Orca 管理人

Nickname : Orca   
Gender : man 
My job : Photographer,Drone Pilot

CERTIFICATION
アドビ認定Photoshopエキスパート(ACE)
JUIDA無人航空機操縦士
第二級陸上特殊無線技士
アマチュア無線技士

プロフォトグラファー歴20年になります。ブログ歴は15年。写真やドローン関連を中心に気になる情報を備忘録として書いております。
d.bibouroku@gmail.com

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