ポートレート写真というと芸能人や政財界の大物などのイメージがありますが、昨今ではブログにポートレートを載せる方も増えてきています。
ブログをビジネスを含めた自己アピールの場として活用している方が増えてきているからだと思います。
自分を高くアピールしたい方にとっては、ブログにUPする肖像写真は大きな要素です。
そこで、一流の肖像写真家の写真やブログからポートレートについて初心に帰って学んでみようと思います。
プロフォトグラファーであっても一流の方の写真を見れば学ぶことは多いはず。
まず、
私が尊敬する肖像写真家の一人。
中岡泰博氏のサイトでUPされている肖像写真がオススメ。
http://www.yasooo.com/jp/index.html
肖像写真というと、写真館などのスタジオで撮影したものを思い浮かべる方が多いのでは?
でも、私は被写体の人間性が出るという意味でも、被写体の方の働く場所や住んでいる場所などでの撮影が好きです。
そういう意味においても、中岡泰博氏は取材先での撮影が基本。その場の光を活かしつつ雰囲気を大切にして撮影するスタイルに魅力を感じ、撮影された写真から技術の高さを感じます。
取材先では、撮影時間が5分程度しか無い場合が多かったりします。
スタジオで数十分~数時間撮影するコマーシャル写真とはまったく正反対とも言える取材写真。
しかしだからこそ、その人の人間性が強く出るのだと思います。
中岡泰博氏は自身のブログ「PHOTOGRAPHER YASU’S BLOG」で次のように書かれています。
カメラマンによってはライティング技で自分らしさを出す人、フォトショップ技で自分らしさを出す人がおりますが、私の場合はそういう形にハマったスタイルはなく、その場でベストな背景や光を活かす方法を使っています。
PHOTOGRAPHER YASU’S BLOG (JP)・”私の撮る写真”から引用
中岡泰博氏は他にも、カメラマンと被写体の関係性や、カメラマンがポートレート撮影する時の注意点なども書かれていますので、ぜひ一度写真とあわせてブログも訪問してみると勉強になると思います。
「大会社の偉い社長さんでも積極的に注文をつけたりします。」という一文があるのですが、これなど実際に撮影するとなると意外と気を使ってしまって思うように注文付けられなかったりします。
でも、そこで一言発言できるかどうかで写真が変化します。
歴史的な肖像写真の巨匠であるユーサフ・カーシュの話で次のようなものがあります。
(手元にカーシュの本が無いので原文とは違いますが意味合い的には同じですのでご了承下さい)
カーシュはその日の被写体をカメラの前に立たせたまましばらく待っていた。
彼とはイギリスの宰相ウィンストン・チャーチル。
なぜ、カーシュがチャーチルの肖像写真を撮る時にシャッターを押さずに待っていたのか。
それはチャーチルが葉巻を口にくわえたままだったからだ。
カーシュが撮影をしたかったイメージはチャーチルが葉巻を口にくわえている時のものではなかった。
カーシュは葉巻をくわえることによって、チャーチルの威厳さを出すのではなく、チャーチルに葉巻というアクセサリーを使わせずに威厳のあるイメージを撮りたかったのだ。
そこで、カーシュはチャーチルに近づき、口にくわえている葉巻をもぎ取るという信じられない行動をとった。
いつも写真を撮影するときには葉巻をトレードマークに使っていたチャーチルは自分の葉巻を誰かも知らないカメラマンに突然もぎ取られたことに怒り狂い、激しい形相でカーシュを睨み付けた!その時にカーシュはイメージ通りの表情を引き出せたことに満足しシャッターを切った。
その時の写真が下のものです。
この写真はチャーチルの威厳ある姿を表しているとして一躍有名になり、それと共にカーシュの名も知られることとなった。
実は、この日の撮影は他のカメラマンが行く予定だった。それが急遽行けなくなり、ほとんど名の知られていないカーシュに声がかかったのだ。つまりピンチヒッターの撮影だった。
しかし、このチャンスを活かし一躍有名になったわけです。
カメラマンとして、肖像写真と言ってもこちら側で注文をつけることの大事さを教えてくれる逸話では無いでしょうか。
また、反対に被写体のことを知らなければ写真のイメージが沸いて来ないと言う事実も教えてくれます。
私も仕事で政財界や芸能界などの様々な分野の方を撮影させて頂いておりますが、気難しそうな方の撮影や超大物の方になるといつも以上に緊張します。
作家の浅田次郎先生を撮影したときは、ちょうど撮影の前に浅田先生の「勇気凛凛ルリの色」というお笑い自伝エッセイを読んでいたので、コワモテと聞いてはいるけれども実際には面白い方!とのイメージがあったのですが、実際にお会いすると、メチャクチャ怖いオーラを出していまして・・・(~_~;)
やはり元自衛隊員という一風変わった経歴をお持ちのコワモテ作家さんだと、一瞬で目が覚めました。
出版社の編集者を回し蹴りすることもあると聞いていたので(笑)かなり本気で緊張した覚えがあります。しかし、そんな浅田先生にも注文をしっかりと付け・・・。たかな?
こんな時には、どんな大物でも自分が萎縮せずに撮影できるかがカメラマンにとって大事なことだと教えられます。
話は変わりますが、2010年11月8日の日経新聞の「仕事のツボ」で”ブログ、顔写真で好印象に ”という記事が書かれていました。
こちらは肖像写真家のタツ・オザワさんにインタビューする形で書かれた記事です。
この記事もポートレート撮影のコツがさりげなく書かれています。
ライティングに関してはプロ向けの内容ですが、玉内公一さんの連載「玉ちゃんのライティング話」が非常に勉強になります。
Shuffle by COMMERCIAL PHOTOで連載されているライティング講座ではポートレートを撮影する上で知っておいた方が良い内容が盛り沢山。
一部をあげると、
第15回 モーテンセンの5つのパターン
第14回 ポートレイトライティングの組み立て
第13回 ループ、スプリットそしてバタフライ
第12回 レンブラントライティングで撮るポートレイト
連載は全35回で既に完結しています。
書籍にもなっており私も購入しました。他には無い素晴らしい内容でオススメです。
今やネットで多くのことが学べる時代。
しかし、カメラマンは現場に出てなんぼの商売。いくら頭で分かっていても、実際の撮影経験に勝るものはありません。
私も毎日の撮影の中で、経験値を上げつつ向上して行こうと思います。
コメント