無人航空機の登録制度と登録記号の表示について
2020年の航空法改正により無人航空機に対する登録制度と登録記号の表示等の義務等が決まりました。2022年6月20日から「無人航空機の登録制度」が開始され、この日以降100g以上の無人航空機は、原則としてリモートIDを搭載した機体以外は飛行させることが出来なくなりました。例外規定がありますが、それは順次流れに沿って書いていきます。
法律により無人航空機の登録が義務付けられたわけですが、同時に「登録記号を識別するための措置を講じなければならない」とされています。
登録するだけでなく、表示する義務が生じてくるということですね。
そして表示するために使用されるのがリモートIDによる発信になります。
リモートID等については、既に内蔵型として搭載されている機種や外付け機器が販売されています。
DJIの一般向け製品では以下の機体がリモートID対応となっています。
- DJI Mini 3 PRO
- DJI Mavic 3 シリーズ
- DJI Air 2S
- DJI Mini 2
ただ、リモートID搭載機種や外付けリモートIDをお持ちでない方も大勢いらっしゃると思います。現時点で分かっている点や課題とされている点などについて書いていこうと思います。
参考とした資料には、それぞれリンクを貼りますので、正確な情報はリンク先でご確認頂ければと思います。
また順次新しい情報が出てくるかと思いますので、内容が古くなることも考えられます。その際には最新情報をご確認頂ければと思います。可能な限り最新情報を反映させるために更新しようとは思っていますが・・・。
概要(PDF形式)PDF形式
https://www.mlit.go.jp/policy/content/001333195.pdf
新旧対照条文(PDF形式)PDF形式
https://www.mlit.go.jp/policy/content/001333207.pdf
リモートIDとは何か?
リモートIDは、飛行中のドローンから登録記号などの識別情報やドローン等の位置情報等を発信し、関係者が情報を受信できるシステムのことです。
航空法が改正され無人航空機の登録が義務付けられました。当初は登録記号を無人航空機に貼り付けるだけなのでは?という予測がありましたが、実際には登録記号等を発信する必要があります。
個人的には車のナンバープレートに近いものなのかなぁと。
ドローンの電子ナンバープレートと呼ぶ人もいるようです。
登録記号を貼り付けるだけだと、上空を飛行している場合は目視で確認できないためIDを発信することで対応するようです。
登録記号等を受信できる関係者は警察官や重要施設管理者、航空局などが想定されているとのこと。
リモートIDの開始時期はいつから?事前登録で免除
開始時期は登録義務付け開始と同タイミングの2022年6月20日から義務化されました。
附則には所要の経過措置を定めるものとする。と書かれています。
この経過措置とは義務化が始まる前に無人航空機登録制度に則り、ドローンの機体を登録すれば義務化以降もリモートIDを装着せずに飛行させることが可能となります。
つまり登録義務化前の登録準備期間に登録を受けた無人航空機は経過措置として装着義務化の例外として扱うということです。
もう既に事前登録期間は過ぎてしまっていますが2021年12月20日〜2022年6月19日に事前登録が行われていました。この期間に登録した機体に関しては例外としてリモートIDを装備しなくても飛行出来ることになっています。
また、例外として以下の資料にある通り法執行機関や特定空域内での飛行にあっては必須とはなっていないようです。
基本的には事前登録をしてリモートID装着の例外措置を受けることが最善だったかと思います。
参考:リモートIDの導入について(内閣官房小型無人機等対策推進室)令和2年12月10日
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/dai11/siryou3-1.pdf
アメリカでは一足先に2021年4月21日からリモートIDが義務付けられました。アメリカの場合、メーカーは18か月以内に遵守する必要があり、飛ばすユーザーは30か月以内にリモートIDを遵守する必要があるとのこと。
ユーザーにとっては2年以上の経過措置があるということですね。
リモートIDの必要性
危険な飛行等を行っているドローンや許可されていない空域で飛行を行っているドローンを警察等が確認できるメリットがあると言われています。
原則としてリモートIDの登録・表示等をせずにドローンを飛ばすと違法になり、100g以上の全てのドローンに登録設置が義務付けられます。
機体への内蔵または外付け機器を使用してリモート ID 信号を発信する必要があります。
無人航空機に関する罰則
今後、新たにドローンを購入した場合はリモートID対応機種もしくは外付けリモートIDを装備して、国交省へ登録する必要があります。もしも登録せずに飛行させた場合には罰則が科せられます。
罰則は重く1年以下の懲役又は50万円以下の罰金になります。
無人航空機を国交省へ登録していてもリモートIDを搭載せずに飛行させた場合は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
以下、航空法令の規定に違反した場合に受ける可能性がある罰則を参考に載せておきます。
- 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金
-
- 事故が発生した場合に飛行を中止し負傷者を救護するなどの危険を防止するための措置を講じなかったとき
- 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
-
- 登録を受けていない無人航空機を飛行させたとき
- 小型無人機等飛行禁止法の規定に違反し対象施設の敷地・区域の上空(レッド・ゾーン)で小型無人機等の飛行を行った者及び警察官等の命令に違反した者
- 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
-
- アルコール又は薬物の影響下で無人航空機を飛行させたとき
- 50万円以下の罰金
-
- 登録記号の表示又はリモートIDの搭載をせずに飛行させたとき
- 規制対象となる飛行の区域又は方法に違反して飛行させたとき
- 飛行前の確認をせずに飛行させたとき
- 航空機又は他の無人航空機との衝突防止をしなかったとき
- 他人に迷惑を及ぼす飛行を行ったとき
- 機体認証で指定された使用の条件の範囲を超えて特定飛行をおこなったとき等
- 30万円以下の罰金
-
- 飛行計画を通報せずに特定飛行を行ったとき
- 事故が発生した場合に報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき等
- 10万円以下の罰金
-
- 技能証明を携帯せずに特定飛行を行ったとき
- 飛行日誌を備えずに特定飛行を行ったとき
- 飛行日誌に記載せず、又は虚偽の記載をしたとき
リモートID登録からID発信までの流れ
現在公表されている資料からリモートIDの登録から発信までの流れを確認してみようと思います。
- 登録申請
- 所有者等は国が開発するスマホアプリ等を使用して必要な情報を入力し申請(この時に本人認証や手数料の払い込みも行う)
- 登録記号等通知(国交省の審査あり)
- 発行された登録記号等をリモートIDのチップに書き込み
- 情報発信
参考資料:小型無人機に関する関係府省庁連絡会議(第11回)資料3「リモートIDの導入について」から抜粋https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/dai11/siryou3-1.pdf
無人航空機の登録内容
所有者は、氏名・住所等や機体の情報を申請し登録します。登録内容は以下とのこと。
- 無人航空機の種類
- 無人航空機の型式
- 無人航空機の製造者
- 無人航空機の製造番号
- 所有者の氏名又は名称及び住所
- 登録の年月日
- 使用者の氏名又は名称及び住所
- その他、国土交通省令で定める事項
※3年以上5年以内において国土交通省令で定める期間ごとにその更新を受ける必要がある
リモートIDの発信情報等
- 国が発行する登録記号
- 位置情報・時刻(緯度・経度・高度、時刻等)
- 認証情報
- メーカーが定める製造番号
(内蔵型にあっては機体の製造番号、外付け型にあっては外付け機器の製造番号)
<発信周期>
1秒に1回以上
<通信方式>
「Bluetooth 5.0」 等
参考資料
小型無人機に関する関係府省庁連絡会議(第11回) 配布資料等
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/dai11/gijisidai.html
リモートIDはどうやって実装するのか
1つには内蔵型、2つめは外部機器による発信が想定されているようです。
DJIに関しては、機体のソフトウェアアップデートで対応できる機種などがあります。
DJI法務担当副社長のBrendan Schulman氏が、その辺りのことはブログに詳しく書いています。DJIとしてはソフトウェアアップデートで、さらにアップデート自体は無料で対応する方向性を示していることが確認できます。
2022年12月現在、DJIでリモートID対応している一般向けの機種は以下になります。
- DJI Mini 3 PRO
- DJI Mavic 3 シリーズ
- DJI Air 2S
- DJI Mini 2
参考:FAA Remote ID: What it Means for You and Your DJI Drone
https://viewpoints.dji.com/blog/faa-remote-id-what-it-means-for-you-and-your-dji-drone
なぜ反対署名まで起きた?
課題とされているのが外部機器によるリモートIDです。
100g程度の小型機で外部機器を装着する場合に、外部機器が想定よりも大きくなってしまって実際には飛行出来ないのでは?との意見も出ていました。
現在発売されているリモートIDの一つが「AEROENTRY AERO-D-X1 外付型リモートID」です。
- サイズ 36.4 mm × 32 mm × 14 mm
- 重量 11.5 g
どれだけ軽くしても11g程度はありそうですね。
行政側から例として提示したリモートID機器の大きさが寸法2×5×10cm、重量100gだったらしく、火に油を注いでいる様子。反対署名運動まで行われましたが、例外措置を取ることで落としどころとしたようです。
詳細は一般財団法人 日本ラジコン電波安全協会の以下のページをご覧ください。
新航空法(ラジコンに係わる部分)反対署名活動ご協力のお願い
https://rck.or.jp/news/2021/20210512.html
議論になったポイントは?
令和2年12月3日に行われた、小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第15回)の議事要旨を読むと議論になったポイントを読むことが出来ます。
- 登録対象範囲について
- リモートIDについて
- ホビー用ドローンについて
参考:小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第15回)議事要旨
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/kanminkyougi_dai15/gijiyousi.pdf
正確な内容は上記リンクで確認して欲しいのですが、資料の一部を見てみようと思います。ざっくりした意訳内容はこんな感じです。
- 無人航空機の対象を200g以上から100g以上に変更するには航空法施行規則を改正することになるが、100g以上に変更する根拠はなにか。
→無人航空機の性能が向上し200g以下の機体でも屋外を安定的に飛行出来る機体が製造販売されるようになってきたのが理由。今後は事故等の被害が懸念されるため。
- 200g未満100g以上のマイクロドローンにも登録対象を拡大する方向性だが、登録した機体全てにリモートIDの搭載を義務付けることに問題を感じる。100gの機体にリモートIDを搭載するのは現実的ではない。
→リモートIDは目視の代わりに確認できる装置であって、小さなドローンであればあるほど、その必要性は高まるので取り付けをお願いしたい。一方で様々な意見があることは承知している。関係業界団体と議論し最終的な判断をしたい。
- 米国ではホビーユースの機体を決められたエリア内で飛ばす場合は、リモートIDを義務付けない方向で検討中だ。日本でも事前に空域の届け出を行うことでリモートIDを外してもよいルールにしたらどうか。
→ホビーユースか否かの線引きは困難だが、特定エリアにおけるリモートID取り付けの免除措置など一定の配慮を行い全体の制度を構築していきたい。
無人航空機の対象を100g以上へと引き下げることについて
今回はドローンの登録制度とリモートIDについて書いてみましたが、私自身、不明確な部分も多々ありましたので書くことで再確認出来きたポイントが多かったですね。
100gからの登録となった点について発表された際はかなり話題になりました。あわせて小型無人機の対象も100gに引き下げる方向性が公開されたことから蜂の巣をつついたような状況に。
国交省から出ているポンチ絵に「施行にあわせて登録・許可承認の対象となる無人航空機の範囲を100g以上に拡大」と書かれていましたから、このポンチ絵を見た人たちは、200gとなっている日本の規制対策として発売されたDJIの超小型ドローン「Mavic Mini」(199g)が対象になってしまうではないか~!と。
海外で発売されている「Mavic Mini」は200gを超えていますが日本特別モデルはバッテリーを小型化し199gを実現。
国交省の許可承認を得ずとも空港周辺など一部空域を除き飛行が出来ることから爆発的な人気を得ました。
ただ、「Mavic Mini」があまりに優秀であるがゆえに、規制の重量が下がったとも言える状況となりました。
諸外国では規制が250g以上となっている国もあって、なぜ日本は最初から200gだったのか。(現在は100g)その疑問に関しては衆院の国土交通委員会で航空局長が説明しています。
その説明によれば、
・落下したドローンが人体に衝突した場合に死亡する程度の被害が生じるリスクを考慮して、各国おおむね二百五十グラム以上を対象としていると承知
・我が国におきましては、地上の人や物等の安全を確保するため、より安全サイドに立ちまして、落下して人に衝突した場合に重傷以上となる衝撃力を考慮して、二百グラム以上の無人航空機を航空法の規制対象としている
参考:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120104319X01620200529/15
より安全性を重視した結果が200g以上の規制となっていたわけです。
落下して人に衝突した場合に重傷以上となる衝撃力を考慮して決められていたとのこと。
では、200g以下であれば落下して人に衝突しても重症以上とならない?と考えてしまいますが、飛行高度が上がれば200g以下でも危険ということで引き下げられているのでしょうね。
ちなみに、今後200g未満のものも含めて規制対象としていくことも明言していました。参考にリンクも載せておきます。
・登録制度が施行されるまでの間に国土交通省令を改正し、200g未満のものを含めて屋外を安定的に飛行できると認められる機体を規制の対象と検討。
参考:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120104319X01620200529/17
今回は、リモートIDについて書いてみました。
今後発売される機体に関してはリモートIDが内蔵されているものが増えることと思います。しかしながら、現在使用されている機体で内蔵されているものは少ないでしょうから、6月の義務化前に登録するのが必須という状況でした。もう事前登録期間は過ぎましたので、今後リモートIDに対応していない中古のドローンを購入した場合は外付けのリモートID機器を搭載する必要があります。
少しややこしいのが、あくまでの所有者が登録するという点。リース契約などでドローンを使用している場合は、リース会社に登録する義務が発生します。しかしリース会社が登録制度に精通していない場合は少し面倒なことになります。
リース会社に登録制度を説明しリース会社に登録してもらうこととなりますが、その際にリース会社の理解度が足りないとトラブルになることも予測されます。
その際には代理申請という登録も可能となっています。その場合には、所有会社の法人設立の登記に係る「登記事項証明書」もしくは「印鑑登録証明書」と委任状をもらって使用者が登録する流れになるようです。
所有者と使用者の会社が違う場合は少し面倒なので、その点は注意が必要です。
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