何度か紹介した話ですが、ついに今年の10月1日から法律が施行されるとのフランスの官報がUPされましたので改めてご紹介してみます。
海外通信メディア等でも流れているので既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、フランスで出版やネット上での公開またはポスターやカタログなどで使用する写真において、その写真をレタッチ(画像修正)を行った場合はその旨明記しなければならない法律が10月1日から施行されます。
以前ブログで紹介した時には法律の内容だけでいつから施工されるのか明確では無かったのですが今月5日のフランスの官報にて10月1日からとの話が出ています。
2017年10月1日以降はモデルに施されたレタッチは書籍・雑誌等に明記しなくてはならないわけです。違反したら罰金取るよ!という罰則規定がついたものになります。強制力がありますね。
Photoshopなどのレタッチソフトが普及し一般化する中で、多くの写真はレタッチされたものです。しかしそれによって若者の健康被害等に繋がる可能性があるとして、この法律が作られたようです。
日本でもうわさ話程度で一部で話題になっていたのですが実際にそんなものが本当に法案になっているのか調べる必要があると思ったので詳細について調べてみました。
フランスの国民議会では若者の健康に関する話題が活発なようで今回の法律もその一環。
フランス語は出来ないのですが、国民議会の法律検索から今回話題になっているレタッチ明記の法律を見つけました。これがその文章です。
フランス語の翻訳は専門の方にお願いしました。
【Code de la sante publique – Article L2133-2】
上のキャプチャー画像はフランスの議会ページの法文の一部です。
以前、この法律案が提出された際にAFPでも記事を配信していたのですが、内容に関してはその時の記事概要が残っていたので抜粋してご紹介します。
法律を提出したのは国会議員50人。いわゆる議員立法というやつですね。
広告やファッション写真などに使われているデジタル加工した人物写真には ” Photographie retouchee “と明記することを義務付ける法案です。つまりこの写真はレタッチしてありますと明記するということ。
これに違反した場合は3万7500ユーロ(約500万円)の罰金が課されます。
法律の翻訳は以下になります。
Article L2133-2
Cree par LOI n°2016-41 du 26 janvier 2016 – art. 19
Les photographies a usage commercial de mannequins, definis a l’article L. 7123-2 du code du travail, dont l’apparence corporelle a ete modifiee par un logiciel de traitement d’image afin d’affiner ou d’epaissir la silhouette du mannequin doivent etre accompagnees de la mention : ” Photographie retouchee “.
モデル(労働法7123-2条の定義に従う)を商業利用する写真家は、実際より痩せて見えるように画像修正ソフトでモデルの外見をレタッチした場合、「レタッチ写真」と明記しなければならない。
Les modalites d’application et de controle permettant la mise en ?uvre du premier alinea du present article sont determinees par decret en Conseil d’Etat, pris apres consultation de l’autorite de regulation professionnelle de la publicite et de l’Institut national de prevention et d’education pour la sante.
前項の施行に関する細則は、関連機関(広告規制機関、保健衛生教育機関)の助言に基づき国務院が発する政令において定める。
Le present article entre en vigueur a la date de publication du decret mentionne au deuxieme alinea, et au plus tard le 1er janvier 2017.
本規定は、2017年1月1日、あるいは前条に定める政令(施行細則)が2017年1月1日より早く定められた場合はその制定日に発効する。
Le non-respect du present article est puni de 37 500 ? d’amende, le montant de cette amende pouvant etre porte a 30 % des depenses consacrees a la publicite.
本規定に違反した場合、広告費用の30%を上限とし、最高37,500ユーロの罰金が科される。
基本的には2017年10月1日から施行されるということですので現時点では ” Photographie retouchee “と明記されたグラビア雑誌などは無いのでは?と思います。
そもそも、この法律が提出された理由はレタッチした写真は、実際にはあり得ないスタイルだったりする場合が多いのにそれが現実のものであるかのように錯覚させてしまうことが良くないというもの。「法案の目的は、ゆがめられた真実を正し、国民の健康を向上させるとともに消費者を保護することにある」というだそうです。
拒食症などがフランスで問題視されていることなどが背景にあるのだと思います。
最近の調査ではフランスで最高4万人が拒食症を患っていると推定されていて、うち10人に9人は女性や少女だといいます。(うち90%は12~20歳)
今回話題にしたレタッチ明記の法案と同時に痩せすぎモデルの雇用を禁止する法律も制定されています。この法律はフランス国内で働くモデルは政府が定めたBMIや健康状態をクリアしたことを証明した健康証明書を提示しなければならないことになっています。この基準に満たさないモデルを起用した会社は6カ月の禁固刑及び7万5000ユーロ(約990万円)の罰金が科せられる可能性があるとのことでレタッチ明記を違反したときよりも罰金が高いですね。それだけフランスでは拒食症が深刻なのでしょう。
レタッチといえば最近では日本でも芸能人である藤原紀香さんのレタッチ失敗写真が話題になりました。
藤原紀香さんのパブリシティ権もあるのでここで画像を貼り付けることはしませんが、ネットで検索すれば簡単に見つけられるでしょうからご興味のある方はどうぞ。
で、問題はこうしたレタッチはほぼ日常的なことになっていて、Photoshopなどを使わなくてもスマホのアプリでさえ肌のキメを整えたり目を大きくしたり顔を小顔にしたりすることは朝飯前です。
またグラビアアイドルの腰回りなんかはレタッチされるのが当然なほどの常識に???
まあ、それは言い過ぎとしてもレタッチされていない写真かどうかは確かに素人では見分けが付きません。いやプロだって見分けられない写真が世の中には沢山あります。
世の若者たちが雑誌に載っているモデルさんのようなプロポーションになりたがるのは日本だけではないわけで、特にフランスでは問題視されているわけです。
来年の1月から実際にフランスの雑誌でどのような明記がなされるのか気になります。
写真ごとにいちいち明記する必要性までは書かれていないようですので、雑誌のどこかに小さく明記する???
う~ん。どうなるのか出版関係者も頭を悩ましているかも知れませんね。
レタッチといえばスニッカーズのネタ広告が話題になっていますね。
https://twitter.com/SNICKERS/status/699647639973924865
お腹が空いたらレタッチが大変なことになっちゃった!っていう面白広告。
レタッチの失敗が全部で11カ所あるんだとか。あなたは全部見つけられる?
まあ、今やモデルをレタッチするのは当然という流れを逆手に取った広告ですね。これを見てフランス議会ではどう考える!?
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