勝負プリントを出力した後の保存に関して、皆さんはどのようにされているでしょうか?
私はプリントの保存に関しては素人同然なので、皆さんに対して発信できる様な立場ではないのですが、私の知っている範囲で自分の備忘録の為に書こうと思います。
あくまでも、そんなものなのかな?程度にお読み頂ければ幸いです。プリントの変色などの劣化は長年の悩みであり、いまだ完全な解決がされていない問題の一つだと思います。
東京都写真美術館が作品保存について書いた文献もありますので、本格的に知りたい方は最後の参考リンクをご参照頂ければと思います。
プリントを劣化させる原因
プリントを劣化させる原因として挙げられるのは紫外線を含む太陽光やオゾンなどがありますよね。
詳しく上げれば、温度や湿度。それに写真を収納している包装材料や写真に照射される光(照射強度や照射時間など)。
そしてオゾンや窒素酸化物、硫黄化合物等の物質の影響もあります。
ただ大きく分けると下の感じでしょうか。
- 太陽光をはじめとした光
- オゾンガス
- 過度な温度と過度な湿度
- 水
- 窒素酸化物(例:一酸化窒素や二酸化窒素など)
もっとも簡単で重要なポイントは太陽光など光に当てないということですね。
そして高温多湿な場所には置かないということだと思います。
これだけ気をつけるだけでも大きく劣化度合いは違ってくると思います。美術館でも作品の温湿度管理と光の照射時間に関しては非常に厳密な決まりがあったりします。
作品の種類(写真技法)によって写真美術館では年間のMax累積照度などが決められています。
美術館では温度や湿度が管理されている
美術館などでは温度や湿度に関しても管理がしっかりされていますよね。そして作品にあてる光の照射時間も決められいます。
温度湿度でいうと写真美術館では以下のように決められているようです。
- フィルム
- 温度5℃±1℃
- 湿度45%±5%
- 一般的なプリント
- 温度20℃±1℃
- 湿度50%±5%
フィルムは写真プリントと比較すると圧倒的に低温なんですね。5℃って、めちゃくちゃ寒いじゃないですか。
つまり冷蔵庫の温度ってことですよね。
未撮影のフィルムは冷蔵保管したりしますが、撮影後のフィルムも劣化を防ぐには同様に冷蔵保管が必要ってことですね。一般人には到底無理な温湿度管理です。
JISによる写真保存の規格
写真(フィルムやプリント)に関してはJIS規格があるそうです。
気になる方は検索して元資料を読んでみて下さい。
- JIS K 7641 写真-現像処理済み安全写真フィルム-保存方法
- JIS K 7642 写真-現像処理済み写真印画紙-保存方法
- JIS K 7644写真-現像処理済み写真乾板-保存方法
凄いざっくり書くと、温度は25度以下で湿度は50%以下が良いよ~って感じです。詳しくはご自分で確認よろしくお願いします。
オゾンが最大の敵!?
ここまで温湿度について書いてみましたが、劣化の最大の敵はオゾンだとも言われています。
もちろん他の様々な要素もあるとは思いますが、オゾンガスは明らかに写真プリントを強烈に劣化させるそうです。
ちょっと調べると、空気中に存在するオゾンガスは強烈な酸化作用を持っているとのこと。
この酸化作用によって、印刷された画像を変退色させる現象を起こすんですね。
また、オゾンガスの他にも、酸化性ガスとしては、NOx、SOx等があるそうですが、これらの酸化性ガスの中でもオゾンガスがインクジェット出力プリントに対する変退色現象をより促進させる主原因物質と言われています。
要するに、プリント劣化はオゾン対策が必要だと言うことですね。
この厄介なオゾンは高電圧の電化製品の近くで発生するものらしく、私たちの身の回りに当たり前のようにあるそうです。
最近ではオゾン発生器なんてものも売ってますしね(笑)
で、現在はどのプリントメーカー(インクメーカー)も、インクジェットプリントに対しての耐光性、耐オゾンガス性、耐湿性、耐水性の向上を日々研究しているようです。
もちろんインクだけでなく用紙にも問題がありますから相互関係で劣化が決定されるので、用紙に対する研究も同時平行で行われています。
保護剤を使用するプリントの劣化対策
全てをメーカーの開発に頼るだけでなく、自分自身でも対策は出来ないのか?ということでプリント保護剤なんてものが発売されています。
これらの保護剤を塗ることでオゾン対策になります。有名なものとしては
ライソン・プリントガードがあると思います。
ライソン・プリントガード
【ご注意】吹き付けた後は写真のトーンが若干沈みます。プリントガード使用を前提とする場合、この点も考慮してプリントする必要があります。
との注意書きがあります。
以前、保護剤と言えば絵画美術の世界のもので木炭や鉛筆、コンテなどの保護剤がメインでしたが、最近ではインクジェットプリントの劣化を嫌う人が多くなった関係で、インクジェットプリント用保護剤というのがライソンのプリントガード以外にも結構出てきたようです。
フィクサチーフ
絵画の世界で良く使われているものとしては、
フィクサチーフというのがあるそうです。
このスプレーは合成樹脂をアルコールに溶かしたものとのことですが、これは変色の危険が少なく、インクジェットプリントにもオススメとの話も聞きます。私は使ったことはありませんが、オゾンに対しての防御能力は結構あるそうです。
ウォータープルーフスプレー
こちらは比較的安価で手に入れやすいかもしれませんね。ネーミングからして水対策がメインのようですから、オゾンに対してどの程度の効果なのか、ちょっと分からないのですが。
保護剤を使用する際の注意点
これらのスプレーを使う際に気をつけなくはいけないのは、以下のPOINTです。美術学校で習うそうです。
- 換気を必ずおこなう
- 使用前に缶を良く振る
- 30センチほど離して、ムラがないように均一に吹き付ける(試し吹きをしてから本番に入る)
- この際には缶は平行にして傾かないようにするのが良いとか。
- 使用後は逆さにして空吹きをする(目詰まり防止のため)
平行にして傾けずに吹き付ける!っていうのは難しい(笑)
ということで、私も勝負プリントが出来たら、面倒がらずにたまにはやろうかなぁ~と思ったりしている昨今です。
メーカーの○○年保障なんていうプリントも劣悪環境だったら数年したら変色してしまいますからね。
一番は保存に気をつけることでしょうか。
私の場合は、そんなに手をかけてまで保存したい!と思える写真を撮影出来るようになることのほうが先ですが(笑)
参考サイト
どちらの資料も東京都写真美術館の関連資料になります。非常に具体的な保存方法や考え方について書かれています。JIS規格資料よりも読みやすいので、こちらをリンクとして貼っておきます。
ご参考にどうぞ。
◯東京都写真美術館における作品保存について:日本写真学会誌 2008年 71巻2号:54–59
◯写真・フィルムの保存方法 :東京都写真美術館 保存科学専門員山口孝子
コメント
コメント一覧 (2件)
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私もまだ調査途中ですが、ウォータープルーフスプレーには耐ガス性はないとのことです。耐UV性のようです。
また溶剤はアルコールですから、染料インクは十分に乾いてから用いる必要があるかも。
耐ガス性はタブローという保護ニスが有効なのですが、インクジェットとの相性や危険性については不明です。私もこれからやってみる予定ですが。
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>dojou7さま
補足説明ありがとうございます。
タブローという言葉自体初めて聞きました(~_~;)
ニスにも様々な種類があるんですね~。
タブローですか。あとで検索してみます。
そして、タブローニスの人柱!
ありがとうございます(^^♪
結果たのしみにしておりますm(__)m