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肖像権・プライバシー権についてストリートビューの問題を通してまとめておきました。

2008年8月にグーグルがストリートビューを開始してから、様々な議論が行われてきていますが、先日総務省で、ある一定の結論が出されたことを受けて、写真撮影をするにあたっての肖像権問題ともからんでくることですから、今後のことを考えて内容を自分用にまとめておきました。

総務省はストリートビューについて違法性は無いとの結論を出しましたが、一言で「合法」と言い切れないのが現状です。

以下は総務省で出された資料を基にかなり抜粋してまとめました。



まず、ストリートビューをはじめとした国内の道路周辺映像サービスについては、
・プライバシーや肖像権の侵害である
・防犯上の観点から問題がある

などの指摘がなされました。

ユーザーからの問題のある画像の削除申請が大量に同社に対して寄せられ、新聞やテレビ等でも大きく報道されるとともに、国会、地方自治体等からも反応が見られた。との事実を最初に取り挙げています。


具体的に各自治体からどのような要望があったのかは、以下に箇条書きにしておきます。

1=当該サービスに対して寄せられた意見の実態調査等の現状把握
2=インターネット非利用者への広報
3=住宅街の公開の適否について、国民からの意見聴取を踏まえての事業者への指導
4=個人・自宅の無許可撮影及び公開に係る法整備
5=画像の撮影及び公開に際して住民から許可を得るよう事業者に指導
6=当該サービスの非公開化
7=第三者による当該サービスの二次利用に関するルール整備の促進
8=繁華街や住宅街等、地域の種類ごとの公開の適否に関する検証
9=新技術の恩恵をすべての国民が享受するための方策についての検討
10=差別等の人権侵害の観点からの検討 11=インターネット以外からも削除要求を可能とするよう事業者に要請


これを見ると、5番などは非現実的な要望のような気もしますが、人口密度の低い自治体からの要望でした。東京でこの要望がだされても現実的には・・・・

ただ、2番のようにインターネット非利用者への広報は必要かもしれませんね。削除要求をする以前に、撮影され公開されていることを知らなくては削除要求も出来ませんからね。



また、道路周辺映像サービスに対して反応を見せているのは国や自治体だけでは無いとして、福岡県の弁護士会が出したストリートビューサービスの中止を求める声明」を取り上げています。

福岡県弁護士会は、平成20 年(2008 年)12 月1日付けで、「ストリートビューサービスの中止を求める声明」を発出し、プライバシー侵害の観点から、同サービスの抱える問題点が抜本的に解決されるまで、同サービスの提供を中止するよう求めているとのこと。



で、結局ストリートビューはいったい何が問題なの?

ということで、「我が国において懸念される法的問題」

として3点問題点を取り上げています。

①個人情報保護法に違反するのではないか
②住宅地の家屋や人を無断で撮影して公開することはプライバシーや肖像権の侵害ではないか
③より信頼されるサービスにするためにはどのような配慮が求められるか
(十分な情報提供、インターネットを利用しない人々への配慮、防犯上の問題への配慮等)等が問題といえる。



①の「個人情報保護法に違反するのではないか」との問題に関しては以下(抜粋)のように説明しています。

道路周辺映像サービスにおいて公開されているのは、主に住居の外観の写真であるが、誰の住居であるかまでは特定できないものが大半であり、現時点では他の情報と容易に照合して特定可能ともいえないことから、居住者の氏名を掲げた表札が判読可能な状態で写り込んでいるなど例外的な場合を除き、原則として個人識別性がなく、「個人情報」には該当しないと考えられる。

また、自動車のナンバープレートの番号が写り込んでいた場合も、ナンバープレートの番号からその登録名義人を照会することは容易ではないことから、個人識別性を欠き、「個人情報」には該当しないと考えられる。個人の容貌が写り込んでいる場合には特定の個人を識別可能といえるが、顔の部分にぼかしをかける等の措置を講じた上で公開している限り、個人識別性を欠き、「個人情報」には該当しないと考えられる。

現時点では、特定の住所から特定の個人を検索したり、逆に氏名から特定の住所を検索したりできるようにはなっておらず、膨大な情報群の中から特定の個人情報を「検索することができるように体系的に構成」されているとはいい難い。

そのため、道路周辺映像サービス提供者は、原則として、道路周辺映像サービスを提供することのみで「個人情報取扱事業者」となるものではなく、個人情報保護法の義務規定の適用はないと考えられる。



②の「住宅地の家屋や人を無断で撮影して公開することはプライバシーや肖像権の侵害ではないか」との問題点に関しては以下(抜粋)の説明をしています。

プライバシーについて一般的に規定した法律は存在しないが、判例法理上、プライバシーは法的に保護されるべき人格的利益として承認されている。プライバシーの具体的な内容については様々な見解があるが、肖像権についても、法律に規定は存在しないものの、「みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由」として、判例法理によってその法的権利性が承認されている。

他方、表現の自由もまた憲法上保障された権利であり、時にプライバシーや肖像権との間で利害が対立することがあるが、一方の権利が他方に無条件に優位するものとは解されていない。

プライバシーについては、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを個別の諸事情ごとに比較衡量し、前者が後者に優越する場合にプライバシー侵害として不法行為が成立すると解されている。

肖像権も、不法行為の成否につき、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきと解されており、プライバシーとほぼ同様に理解されている。

道路周辺映像サービスの目的は地図情報の提供であって人の容貌の公開自体が目的なわけではない。撮影態様についても公道から周辺の情景を機械的に撮影しているうちにたまたま居合わせた人の容貌が入り込んでしまったにすぎないことから、特定の個人に焦点を当てるというよりは公共の場の情景を流すように撮影したものに類似する。したがって、ごく普通の服装で公道上にいる人の姿を撮影したものであって、かつ、容貌が判別できないようにぼかしを入れたり解像度を落として公開したりしている限り、社会的な受忍限度内として肖像権の侵害は否定されると考えられる。

したがって、肖像権との関係でも、サービスを一律に停止すべき重大な問題があるとまではいい難い。
もっとも、道路周辺映像サービスでは、一部に、風俗店等に出入りする姿、立ち小便をしている姿、職務質問を受ける姿等公道であっても撮影、公開されることを通常許容しないと考えられる写真が入り込むこともあり得るため、肖像権侵害となるかどうかは、プライバシーと同様に最終的には事例ごとの個別判断とならざるを得ず、その意味で道路周辺映像サービス提供者に一定の法的リスクが残ることは避けられない。



③の「より信頼されるサービスにするためにはどのような配慮が求められるか」についてはカメラマンの写真撮影とは直接的に関わってくる問題ではないので割愛します。



補足として、公共の場での撮影で肖像権の侵害とされたケースと侵害とはされなかったケースの判決のいくつかを載せておきます。

・肖像権の侵害とされたケース

平成17年9月27日 
「街の人」肖像権侵害事件 東京地裁
 無断で撮影された写真をインターネット上のサイトに掲載されたとして、東京都内の30歳代の女性が、サイトを開設している財団法人「日本ファッション協会」に330万円の賠償を求めた訴訟の判決があり、石井浩裁判長は「無断掲載は肖像権の侵害」と述べ、慰謝料など35万円の支払いを被告側に命じた。


上記の文章を読むだけでは、なぜ肖像権の侵害とされてしまったか疑問に思うかもしれませんが、この写真は2ちゃんねるで話題になってしまったのです。
というのも、この女性は昭和四七年生まれの30代なのですが、着ていた服が「DOLCE AND GABBANA」がパリコレクションに出展したもので、胸部には大きく赤い文字で「SEX」というデザインが施されていたんです。

いくらファッション性の高い服とはいえ、それを知らない人からは、好奇の目で見られることも予測できます。


で、この写真が無断で掲載されてしまったことから、2ちゃんでの非難中傷がはじまったんですね。

その内容たるやひどいもので、判決文を読む限りでは、ここには書けないような、メチャクチャ人権無視な言葉で誹謗中傷が書き込まれたことが伺えます。

このことによって、裁判が行われたわけですが、財団法人日本ファッション協会が開設したウェブサイトの「Tokyo Street Style〔銀座〕」のページに、こんな写真を無断で掲載すればどのようなことに発展するか、ある程度はわかったはずです。


判決文の一部を引用(抜粋)すると、
「特定のファッションを楽しむ原告の姿は、原告が公道上を歩いているとしても、その周囲の人に一時的に認識され得るにすぎないが、本件写真が撮影されることにより原告の容貌等が記録され、これが本件サイトに掲載されることにより、上記の限られた範囲を超えて人々に知られることになる。また、本件写真は、原告の全身像に焦点を絞り込み、容貌を含めて大写しに撮影したものであるところ、このような写真の撮影方法は、撮影した写真の一部にたまたま特定の個人が写り込んだ場合や不特定多数の者の姿を全体的に撮影した場合とは異なり、被写体となった原告に強い心理的負担を覚えさせるものというべきである。

中略
 
 したがって、原告の承諾を得ずに、本件写真を撮影し、これを本件サイトに掲載した被告らの行為は、原告の肖像権を侵害するものと認められる。」



つまり事件の背景を知れば、肖像権の侵害と言われても納得です。
通常の常識があればネットに無断で掲載するようなことはない事例ですからね。



他には、

平成16年7月14日 
アイドルタレント隠し撮り事件 東京地裁
 ファンが「お宝写真」などと称して投稿した写真を無断で掲載したとして、「モーニング娘。」のメンバーら計19人が、投稿写真誌を出版するコアマガジン(東京都豊島区)とサン出版(新宿区)に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁はプライバシー権の侵害を認め、出版社側に計1240万円の支払いを命じた。
 両出版社は写真の投稿を募り、女性タレントが私服で歩いている姿や芸能人になる前の写真などを無断で掲載した。市川正巳裁判長は「これらの写真は私生活上のもので、原告らは不快、不安に感じた」「芸能人だからといって、プライバシー侵害を甘受しなければならない、というわけではない」と判断した。


反対に、

・肖像権の侵害とはされなかったケース

平成3年9月3日
岡山地裁
公道を歩いていた不動産鑑定士の写真を写真週刊誌が掲載した事件の岡山地裁判決では、「本件写真の撮影態様は、原告の私的な生活をのぞき込むようなものではなく、公道を歩行中の原告を撮影したものであり」「本件写真の撮影及び掲載」は「違法性を欠く」とした。


それぞれ事件の背景を知るために判決文の全文を読まないとなんとも言えませんが、基本的には常識的(これが難しいところですが)な判断に基づいて撮影、公開することにおいて、違法とされたケースは見当たりません。


長くなってしまったので、この辺りで・・・。





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じっくり読ませていただきま~す。

世の中無闇に「個人情報」うんぬんと騒いでいるけど、法的には適用除外もあって。本来は肖像権の方なんだよね~(笑)
2009/06/25 22:17 | 画像屋 #Cffe//BI | [edit]
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